Van der Kolkにとっての小さな女神

オリンピック銅メダリストのKirsten Van der Kolk(オランダ)は今年の世界選手権出場を断念しました。

7月に生まれたばかりの子ども「Nike」の世話をしなければならないからです。

Nikeはギリシャ神話の勝利の女神からとった名前です。

両親がともにボート選手であるNikeの運命はすでに決まっているのでしょうか。


夫婦ともにオリンピックのメダリストです。

夫のPepijn Aardewijnは軽量級ダブルスカルでアトランタオリンピック銀メダルを獲得。シドニーにも出場しました。


しかし、Van der Kolkは大きな問題を抱えています。

「このまま漕ぎ続けるべきなんだろうか?」


出産から1週間後、彼女は相変わらず美しく、以前と同じ体重に近づきつつありました。

「また漕げればいいなと思っているわ。日本語を勉強したし、岐阜で漕いでみたかった。でも、もうメダルは持っているしハードなトレーニングを考えるとね・・・。もしまたトップに立てるのなら復活するわ。でも、それがどんなに大変なことかもわかってる。

私にはオリンピックレベルの技術はある。あとは体力的な問題だけ。

少しずつ様子を見ながらトレーニングを始めてるわ。またオリンピックに出るのは大変だけど、世界選手権なら出場できるかも。」


彼女は妊娠中、それなりに運動を控えていました。控えていたつもりでも、きつかった。

「自転車で片道30分かけて通勤するのは大変だったわ。体の限界がわからなくなることもあったし。

走ってはダメ。ゆっくり歩かなくちゃ。でも、出産の前日も泳いでたわ。」


彼女はボートも続けていました。妊娠26週目にしてキャッチができなくなるまで。

「おなかが大きくなりすぎたわ。」


出産後、子どもが落ち着くまで運動を控えるように医者から注意されました。

「5週間も待たなきゃならないの。とても長いわ。」


ほとんどの選手が出産後、スポーツをやめてしまいます。

「他の国には子持ちの選手がいっぱいいる。でも、オランダでは経済的な理由でボートと子育ての両立が難しいの。」


子持ちのボート選手に対する支援は国によって様々です。

アテネで優勝したルーマニアの女子エイトクルーの半数以上は子どもがいます。

Elisabeta Lipa、Elena Georgescu、Gerogeta Andrunache、Aurica Barascu、Doina Ignat。

そして軽量級ダブルスカルの勝者Constanta BurcicaとAngela Alupeiも母親です。

アテネでダブルスカルに出場したCamelia Macoviciuc Mihalceaには2人の子どもがいます。

対照的に、アテネでエイトのストロークを漕いだLianne Nelsonは、アメリカチームの中で初めて出産後もボートを続けました。


女子シングルスカルではアテネのファイナリストのうち3人が子持ちです。

Ekaterian Karsten(ベラルーシ)、Rumyana Neykova(ブルガリア)、Sonia Waddell(ニュージーランド)です。

Kathrin Boron(ドイツ)は2002年に出産し、アテネで4つ目のオリンピック金メダルを獲得しました。


Van der KolkはNikeとともにトレーニングを続けていけるかどうかはわからないと話しています。

しかしコーチのJosy Verdonkschotは彼女が復活することを熱望しています。

アムステルダムのBosbaanでNikeを自転車に乗せてコーチングをするのが楽しみなのです。


FISAの医療部門に所属するJuergen Steinacker曰く、

「妊婦とスポーツに関する研究は進んでいるが、子持ちのボート選手に関しての研究はそれほど多くはない。ふつう、妊娠はボート選手にとって問題にはならない。4−5ヶ月で復帰できる。唯一の問題は体を曲げてフォワードすることだ。これは無理に行ってはいけない。」


彼はドイツチームのチームドクターでもあり、妊娠・出産の際にも選手のパフォーマンスは維持することができるとみています。

また、腹部と骨盤の筋肉の発達により、出産が容易になるようです。


彼によると旧東ドイツの研究はあてにならないそうです。

「東ドイツではそれぞれ見解が違っていて、信憑性が低いものばかり。出産によりパフォーマンスが向上したとの研究があるが、それもホルモンや体の状態によって左右されるということはあまり知られていない。」


Van der Kolkはまだ決めかねています。

「まだ様子を見なくては。夫は続けないで欲しいみたいだけど、邪魔はされたくはないわ。」

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