「ハードトレーニングは勝利を約束しない」に関する補足

早速の反応をいただいて嬉しく思います。松井さんからの疑問に私の回答をいたします。

第五話[ハードトレーニングは勝利を約束しない]はたしかに各論に触れてなく、はじめて読まれた方にとっては総論過ぎてなにをどうすれば良いのか分からないとのご意見には納得です。

理解をサポートする意味で少し、補足します。

1.ハードトレーニングの定義

トレーニング効果を極、基本的な定義をすればトレーニングによるストレスで一時低下した能力が、適当な回復の機会を持つことで元のレベル以上に達する現象をいう。とするなら、このサイクルが保てないトレーニング負荷をかけること、また回復に要する機会を設けない状態をオーバトレーニングという。トレーニング負荷は単に強度だけでなく時間、精神的負荷、消費エネルギー(物理的身体的)の大きさ等のトレーニングに起因するすべてのストレスの大きさをいいます。したがって、受け入れることができるぎりぎりの大きさまで負荷を掛けるのが良いと単純に考えるのではなく、効果が十分期待できるなら量に拘ることなくそこで止めておくべきです。のこったエネルギーは他の目的に振り向けたり、休養に当てることが効率的です。また、オーバートレーニングの領域に知らずに入り込む危険も減ります。このようにただ根拠もなく、ノーコンで多くの負荷を掛けることを言いたかったのです。良い意味のハードトレーニングは必用です。

2. VO2Max.への考察

これは体格が大きければ大きな値になります。そして、トレーニングにより開発できるのは体格とか種の差を越えるのは至難です。そして、何年もトレーニングしてきた選手が大幅に今からこの能力を何割ものばすのは現実には無理でしょう。近年、軽量級のタイムがどんどん伸びてきています。その差はオープンに対して3〜5秒です。VO2は2〜3割も違うのに!!日本ではVO2が大きいオープンの選手が小さい軽量に勝てません。 どうしてでしょう?

VO2Max.は運動生理学者にとっては興味のある指標ですが我々、ボートの現場にとっては一つの値に過ぎません。ボートの推進力の指標はVO2Max.ではありません。6分間、ATレベルでどれだけの仕事が持続できるか。また、その値は体重にたいして大きいのかが問題です。良いトレーニングをした結果としてVO2Max.が大きいことも起こりうると考えています。他人との比較論ではなく自分の持久力を最大に開発する必用は大切なのでおこなうべき。UTトレーニングは欠点克服トレーニングではないのです。また、持久力はボート特有の運動形態と強度によりトレーニングしないと目的は達成出来ません。その意味で高い水中強度が望ましいと考えてます。平均運動強度を高くせよとの意味ではありません。(体内のエネルギー産生のメカニズムを意識してトレーニングもその状態に近づける)

3.技術の持続

ほとんどのクルーがレースの後半にテクニックを崩すのはなぜか?理屈は簡単です。生理学的持久力が尽きて表現出来なくなっただけです。もちろん、下手なクルーは一部の筋のみが早く疲れて同じ生理学的持久力があってもより早くだめになります。

4.サスペンション

サスペンションは効率良く゛力´を伝えるために大切です。艇速はお説のとおり、沢山の仕事量を艇に与えなくては得られません。力はエネルギーの大きさを表していませんのでサスペンションが良くても2000mは走らないのです。

[参考]
  • 瞬時の艇速=パワー(単位時間当たりの仕事量)→1ストロークのみの強さ→力の要素で決まる
  • 2000mのタイム=総仕事量→トータル/ストロークの和→1ストロークの強さ×競漕時間の持続

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