ナンセンス 国体

シーズンが終わってから日頃のつけが廻って来たのかやたらと忙しく過ごしています。エネルギーが少しは枯れ気味のほうが私の場合はマイルドで良いかもしれません。それと国体から2ヶ月がたってホトボリも冷めてこのテーマも関係者には冷静に読んでいただけるとの期待もあります。

先ず、自慢話を兼ねて私の国体歴を紹介しましょう。1961年の秋田国体に始まり1984年の奈良国体で40才、決勝4位(決勝ビリ)で終わりました。この機会に資料を調べたところ、優勝7回、5位2回、3、4、8位が各1回づつで思っていたより少ない入賞成績でした。これに加えて監督・コーチとしての参加が11回、合計23回の出場経験です。

クラブの同胞?斉藤理恵さんは今年の神奈川国体で6回目の優勝をしましたから彼女に抜き去られるのはもう時間の問題となりました。そんな訳で、今の国体へ少しくらいの注文を付けても許してよ!!と言うところです。ついでに次回予告は「筋トレはボートを速くしない」復活版です。

行く先のない国体

戦後、国民に元気を付けてもらう目的で各県持ち廻りで全国国民大運動会をやることになったそうな。それがもう当初の目的なんかとっくに意味がなくなった現在も肥大化しながら続いている。もういい加減にヤメロ!!

各都道府県対抗の形式をとっていることが国体を間違った方向へ行かせた主な原因と私は考えている。都道府県対抗だから当然のことながら県のお役人主導になり、彼等のメンツのためにすべての強化策は発想されていると言えば言い過ぎだろうか。役人でなく制度が悪いのだ。つまり生涯スポーツでもチャンピオンスポーツでもない国体スポーツというもう一つのカテゴリーを作って、大金をつぎ込む結果となっている。

スポーツ振興施策の大義名分で極めて限られた範囲に対してエネルギーが注がれている。そして県民の関心を集める努力がなされている。極論すれば世界選手権で活躍するより、国体で勝った方が地元では歓迎される。田舎にいる親父は純粋に国体に勝てば日本一になったと喜んでくれるが、選手本人はなんとなく冷めた気分になってしまう。県境ばかりか国境すらも意識しなくなりつつある今の時代に、都道府県対抗にどんな価値があるのか聞かせてもらいたい。ナンセンスと言わざるを得ない。

もっと大らかに国民大運動会をやればいい。数年前に一時期、競技歴の少ない選手を対象に2部制が導入されたが国体の競技レベル向上を望む声に押されていつの間にか消えてしまった。これからもこのまま、看板だけの日本一を作る大会を続けていくのか?

国体ボート競技

先ず、国体ボート競技というより国内の1000mレースの代表的なこの大会に対して意見を述べたい。国体を筆頭に国内の主要大会のほとんどが1000mである。世界の「ボート競技」は2000mである。しかも日本人の特性として1000mレースだから適当にやっておこうとか、楽しもうという発想はない。それを究極の目標にして猛練習をやっているチームも多い。もともと少ない競技人口のボートに1000mと2000mの二重構造を作りあげた罪は大きい。世界と戦うためには別の準備をしなくてはならないのが現実となっている。統計学的にみても2000mの競技選手ができるだけ多い方が優秀な2000m選手を輩出する機会が増えると考えるのは普通だ。日本の国際競技力を考えるうえからも早急な改善が望まれる。

我国の国体ほど大会設備、大会役員配置が立派なボートレースは少ない。オリンピックの次くらいはいっていると思う。こんなコストがかかっている大会を毎年、場所を変えてやるのだから驚きだ。私に言わせれば大会運営を豪華に成功させるより、レースの質を向上させるためにのみエネルギーを集中してほしい。

レースの質とは直接関係はないが、国内での大会なのに1レースごとにテント前に選手を呼び、首実検(監視)をやるのは腹がたつと言うより滑稽だ。なんであんなに威張る(そのように感じる)のか。やりたければ役員が出艇船台まででてきてやれば良い。選手の立場を優先するのが基本ならこれが常識ではないだろうか。海外の大会は船台で選手が分からないうちに終わってしまっている。

それと主催者配艇方式ももう必要なくなった。日本の造艇メーカーへの信頼を低下させたのは規格艇を配艇するという独特のシステムだ。メーカはそこそこの規格艇を作りつづければ飯が食える。これでは保護政策の典型みたいでなんかの教科書に載せてほしいくらいだ。この条件下でどんどん日本の造艇技術は世界のメーカーに対して相対的に低下してしまい、選手現場の信頼を失いつつある。そして、艇を揃える主催者の負担も決して少なくないはずだ。

私は大会の運営を担当したことがないから上記の意見は的を外していることもあることは承知している。そして、代案のない批判は無責任でもあるのでいくつかの提案をしてみる。

1. 都道府県対抗をやめる。
これをやらなければ各県担当お役所の肩の力が抜ける。国体をほんとうの国民とか 県民スポーツ振興として考える余裕が生まれるのではないか。その意味で2部制復活もよい。2回以上勝てば次から国体出場は遠慮してもらえば国体プロもいなくなる。
2. 地域ブロック持ち廻りにする。
府県単位ではなく全国9ブロック内での定位置開催となれば2000mコースも探し易いし、会場設営コストも下がる。また、全国を順番に廻る目的も叶えられる。
3. 配艇方式から自艇参加とする。
規格艇でレースを行うのは公平という反面、大型選手にたいしては不公平も生んでいる。改善されたとはいえ現行の規格艇ですべての参加選手の要求するリギングには対応できない。自艇参加ならこの点はクリアできる。リギングは一度やれば済むので配艇場のスペースも3、4段積みの架台を準備すれば狭くても対応できるだろう。

確固たる存在を誇る国体だ。国体とはこういうもんだと多くの人が思っているのにこれにむかって言たい放題ではどこからか“石が降ってくる”くらいは覚悟している。しかし、だれかが言い始め、改革が進まなければ私の青春の思い出を作ってくれた国体は到底100周年記念を迎えるまで持たないのではとお節介ながら心配している。

この文書の情報