減量の理論〜減脂肪は難しい〜

坂本剛健

ボート選手が減量をする上で気をつけなければいけないのは「体重が減ればそれでいい」のではなくて「パフォーマンスを落とさないように体重を減らす→体脂肪を減らす」ようにすると言うことである。ちまたにあふれている「何とかダイエット」は体重を減らすためだけの物が多いので注意が必要である。楽してやせようなんて思わないことだ。

脂肪は1gあたり9kcal。エルゴを1時間漕いでも消費カロリーはせいぜい600〜900kcal。仮に全部が脂肪エネルギーを用いたとしても脂肪は70g〜100g減るだけ。これを10回やってようやく1キロやせるかやせないか。もしこれ以上体重が減っていたらそれは水分か筋肉中のグリコーゲンの減少によるものだろう。仮に5キロ程度の減量が必要だとすると、50回は1時間エルゴをやらないとだめになる。再度繰り返すがこれは「仮にエネルギー全部を脂肪から得たとしても」と言う仮定の下である。実際は糖質、タンパク質もエネルギー源として使われるためこんなに脂肪は減らない。

性別によっても減量効果の出方がかなり違うようだ。やはり女性は男性よりやせにくいというデータが出ている。ホルモンなどの関係だろうか? また、一流スポーツ選手にもよく見られる「やせて、太って」の繰り返しは結果的にやせにくい体(逆に言うと脂肪が付きやすい体)を作ってしまうようだ。シーズンオフにも十分生活に気を配って余分に体重を増やしてしまわないようにする必要がある。ジュニア選手は健康上の理由で軽量級が無く、減量をする必要はないが、若いうちに太ってしまうと脂肪細胞の数が増えてしまい、やせにくい体になってしまうので気をつけた方がよい。

一般的に行われている脱水(サウナなど)については、体水分の減少は血しょうの減少につながり、ひいては持久力の減少をもたらすのでボート選手はこの方法で体重を減らすべきではない。夏の炎天下にウインドブレーカーを着込んで乗艇orエルゴorランニングをするというのがいかに意味が無く、危険なことかというのを認識しなければならない。トレーニング中はのどが渇く前に水分補給する癖を付けよう。

ではどのように減量するのか。トレーニングによるカロリー消費と、食事のカロリー制限の両方から行う必要がある。それも、レースの数ヶ月前から行う必要がある。なぜか。減量期間が短ければ短いほどパフォーマンスが落ちるというデータがあるからだ。一月に1キロ、多くても2キロの減量がいいのではないだろうか。

トレーニングはやはり長時間のユーティリゼーションが脂肪燃焼に一番効果的だ。それによって脂肪の付きにくい体に改造することにもなる。20分以上は行わないと脂肪燃焼が始まらないので最低30分、出来れば1時間以上行うのがよいだろう。

食事ではカロリーを減らすために脂肪をまず減らす。ボート競技でのエネルギー源となる炭水化物(ご飯、パン、麺類)は減らしてはいけない。また、ビタミン、ミネラルが十分摂取できるように野菜、果物はちゃんと食べる。なるべく多くの種類の食物を食べることでビタミン、ミネラルの摂取を心がける必要があるが、減量中はどうしても不足しがちになると思うのでその場合は複合ビタミン剤の使用も効果的であるとは思う。

僕も一度だけ減量したことがある。高校3年生のインターハイが終わって部活を引退したあと、大した運動もせずにいたら卒業する頃には14キロも太っていた(55キロ→69キロ)。持っていたズボンなどもすべて入らなくなり、受験の時には新しくジーンズを買ったことを思い出す(それまでウエスト28だったのが32になった)。めでたく浪人が決まったあと、これは何とかして減量しなければいけないと思って運動と食事療法を始めた。運動は夜のランニング(せいぜい3,40分)、自宅での筋トレだった。百科事典などを鞄に詰め込んでウエイト代わりにしていた。食事はご飯を半膳で我慢すること。これは苦痛だった。が、半年後体重は62キロまで減った。

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