漕艇通信4月号で瀬田漕艇倶楽部を取り巻くここ数年の動きと安定した収入源について、問題提起をしました。今月号では具体的なおカネの推移についてご紹介するとともに安定的な収入基盤のモデル例を提示いたします。
具体的な数字の話へ入る前に、まず瀬田漕艇倶楽部の会計の仕組みについて説明します。会計の仕組みを理解することで、事業収入(公益事業&収益事業)の必要性を実感していただけると思います。「会計の話はわかりません。」「苦手です。」という会員も多いかと思いますが、1人1人が自分の問題として考えていただくことで、今後の瀬田漕艇倶楽部での活動や取り組む姿勢も変わってくると思います。
繰り返しになりますが、おカネの問題は他人事ではありません。
(総会資料の予算書・決算書をご参照ください)
現在、瀬田漕艇倶楽部の会計は「特定非営利事業会計」と「収益事業会計」の2つを柱としています。NPO法人化前後は、「一般会計」「特別会計」「収益会計」「艇庫積み立て会計」の4本柱でしたが、昨年度の決算から「一般会計」と「特別会計」を「特定非営利事業会計」に一本化しました。「艇庫積み立て会計」は昨年度の駐車場用地購入時に全額取り崩したため、現在の2本柱となりました。それではそれぞれの会計について説明します。
「特定非営利事業」とは、具体的にはボート教室やコーチセミナーの開催、朝日レガッタのスタート設営などのレガッタ支援、Head Of The Setaの主催などの事業です。ここでは次に説明する収益事業との違いを明確にするためにこれらの「特定非営利事業」を「公益事業」と呼ぶことにします。「公益事業」の収入・支出に加えて、収入面では会費、入会金、寄付金など、支出面では日常的な倶楽部の経費(光熱費、漕艇通信発送費、税金、強化普及費など)や艇などの資産購入、クラブハウスの備品購入などが「特定非営利事業会計」で扱う内容となります。つまり、「特定非営利事業会計」とは、NPO(特定非営利活動)法人としての本来の活動(※1)にまつわる会計と考えてください。
(※1)定款の第5条に「この法人は、第3条の目的を達成するため、次の事業を行う。
」とあります。具体的な事業は下記のとおりです。
「収益事業」はNPO法人としての本来の活動以外での事業収入とお考えください。具体的にはボート関連グッズの販売、ミニFMレンタル、艇運搬分担金収入などの事業です。
NPO法人は営利企業ではないので金儲けをしてはいけないと考えがちですが、非営利団体といえども、事業を行い、法人をマネジメント(経営・管理運営)していくには当然おカネは必要です。営利団体に比べ、収入基盤の弱いNPO法人だからこそ、おカネを生み出すことにはシビアに取り組まねばなりません。むしろ、NPO法人は営利企業以上に、おカネを生み出す努力をしなければならないと考えます。
瀬田漕艇倶楽部が事業を行うために、おカネを捻出するには、NPO法人としての本来の活動だけでは確保できないこともあります。瀬田漕艇倶楽部の場合、上記の会費収入や公益事業などの「特定非営利事業」だけでは、事業に必要なおカネは調達できても、将来の投資のためのキャッシュを生み出せないのが現状です。だからこそ、収益事業が必要となるのです(※2)。
このキャッシュを生み出せない状況が長く続くと、まさに“貧すれば鈍する"ということになり、競技活動や事業活動もジリ貧となる悪循環につながります。
(※2)定款の第5条2項に収益事業について定められています。内容は下記のとおりです。
- 収益事業
- 1. 物品等の販売事業
前項第2号に掲げる事業は、同項第1号に掲げる事業に支障がない限り行うものとし、その収益は同項第1号に掲げる事業に充てるものとする。
NPO法人としての本来の活動であるかどうかが「特定非営利事業」と「収益事業」の区分根拠となります。「特定非営利事業(=公益事業)」で発生する余剰金はNPO法人としての本来活動に非課税(課税されるケースもあります)で組み入れることができます。一方、収益事業はNPO法人としての本来活動以外での事業収入となるので、この事業での収益は課税対象となりますが、「特定非営利事業会計」に充当することは出来ます。また、「公益事業」については、各種助成金も申請できます。SSF(笹川スポーツ財団)やtoto(スポーツ振興くじ)などの助成です。
少し長くなりましたが、瀬田漕艇倶楽部の会計の仕組みについて、理解していただけたでしょうか?
次頁に、ここ数年のおカネの推移についてまとめました(次頁グラフ参照)。
現在、瀬田漕艇倶楽部には火災保険の満期金額を含めて、1,000万円近くの現金資産があります。一見すると潤沢におカネがあるように感じます。しかし、2年前に比べると駐車場用地購入のため、現金資産が半減しています。また、事業収入(特に収益事業)の利益は1/3に縮小しています。今後のさまざまな設備投資や艇庫積立金を再開するには、ここ数年のおカネの流れは決して良い状況とはいえません。資産購入・設備投資の優先順位もありますが、今のままでは新たに艇を購入することもできません。
おカネを増やす方法は収入を増やし、支出を減らすのが鉄則です。ただし、過度の支出の切り詰めは事業の縮小均衡につながりかねません。無駄な出費を慎むのは当然ですが、それ以上に、どうすれば収入増につながるかを考え、具体的な行動を起さねばなりません。
私見になりますが、新たな現金を年間300万円生み出せれば、毎年のように艇購入(小艇が1艇程度)ならびに艇庫積み立てが可能になります。つまり、安定的な収入基盤実現の最低ラインとして「特定非営利事業」「収益事業」での年間収支差が300万円は必要と考えています。それでは具体的に何をしていけばよいのでしょうか?
先月号でもお伝えしましたが、瀬田漕艇倶楽部の収入源は主に[1]会費、[2]助成金、[3]寄付金(法人賛助の開拓等)、[4]事業収入(公益事業&収益事業)の4つです。これらの内、自力調達である[1]と[4]を増やすために、行動を起こすことが当面の倶楽部の課題であると考えます。
どうすれば会員を増やせるのか?会員の適正規模は?会費は今のままでも良いのか?公益事業&収益事業の新規事業をどのように展開するのか?法人賛助はどのように開拓していくのか?・・・・・。
理事会では倶楽部の将来を見据え、安定的な収入基盤を築くために議論を重ねるとともに、具体的な行動を起こしていきます。会員の皆さまも、「倶楽部とどのように関わっていくのか?」「瀬田漕艇倶楽部を通じて“何"ができるのか?」について、お考えいただき、行動していただければと思います。何か具体的な行動を起こすことで、世の中は動き、おカネも動き始めます。
「何」をするかのお手本はありません。このお手本を作っていくのが、クラブチームのフロンティアでもある瀬田漕艇倶楽部の役割であると考えます。
最後に脅すわけではありませんが、もし安定した収入基盤を実現できなかったとすると、倶楽部が破産、解散することも将来的にはあるかもしれません。もし、そうなった場合、倶楽部の財産は何も残らなくなることを肝に銘じてください(※3)。
(※3)定款第52条に解散時の残余財産の帰属に触れています。内容は下記のとおりです。
- (残余財産の帰属)
- 第52条 この法人が解散(合併又は破産による解散を除く。)したときに残存する財産は、法第11条第3項に掲げる者のうち、国又は地方公共団体に譲渡するものとする。
2001年末 | 2002年末 | 2003年末 | |
---|---|---|---|
合計 | 27,151,666 | 21,931,554 | 13,963,574 |
火災保険 | 5,000,000 | 5,000,000 | 5,000,000 |
艇庫積立 | 9,522,173 | 9,525,219 | |
収益 | 8,224,293 | 2,341,460 | 2,719,399 |
一般+特別 | 4,405,200 | 5,064,875 | 6,244,175 |
2001年末 | 2002年末 | 2003年末 | |
---|---|---|---|
合計 | 7,538,000 | 4,480,000 | 5,865,000 |
会費収入等 | 3,328,000 | 3,880,000 | 4,065,000 |
助成金 | 410,000 | 400,000 | 790,000 |
法人賛助 | 300,000 | 200,000 | 200,000 |
事業収入 | 3,500,000 | 0 | 810,000 |
※会費収入は年会費(個人・個人賛助)+入会金
2001年末 | 2002年末 | 2003年末 | |
---|---|---|---|
収益事業売上 | 11,417,175 | 5,914,207 | 5,158,890 |
原価 | 6,645,211 | 3,836,466 | 3,593,953 |
粗利益 | 4,771,964 | 2,077,741 | 1,564,937 |