第6回 瀬田漕艇倶楽部のブランド力は何か?

社会貢献担当理事 岸本博人 (hirotok@pop21.odn.ne.jp)

ヒトは、自分がまわりからどう思われ、またどのように評価されたいかということに興味関心がある。日常の仕事や学業、あるいは家族において、自分以外の誰かが関わってくると評価は絶えず行われ、また行うものである。一見、非常に孤独で利己的だと思われる個人スポーツの日々の練習、受験勉強、個人自営業ですら、周囲の理解と励まし、サポートなしでは成就しない。ましてや、多くの人々の協調でおこなわれる物事の成否は、各個人の正当な評価、互いに認め合うことで得られる信頼感に因るところが大きい。

では、人格(法人格)を持った瀬田漕艇倶楽部はまわりにどう思われ、どのように評価されたいと考えていけばいいのだろうか。私の瀬田RCに対する想いを記載し、会員全員の力で倶楽部の将来像を醸成していく一助にしたいと思う(他人(ヒト)から評価されるために活動しているのではない、本末転倒だとおっしゃる方もおられると思いますが、第3者的立場から考えてみることも価値あるかも?とお考えください)。

瀬田漕艇倶楽部を評価するグループを3つに大別しましょう。

1)ボート界・ボート関係者からの評価

日本ボート界の特徴は、学校の部活動で初めてボートと関わり、速く艇を進めること(競技スポーツ)が唯一の喜びとして発展してきている(生涯スポーツとして、ただボートを漕ぐのが楽しい、と活動する層は圧倒的に少ない)。現在ボートを漕いでいる人のほとんどが競技者で、過去にボートを漕いだことがある経験者もほぼ全員が競技志向の団体に所属していたことを考えると、彼らから高い評価を得る一番の方法は、倶楽部から優秀な選手を多数輩出することに他ならない。

そもそも、選手は自己実現のため(強くなりたい、速くなりたい)に練習するのであり、小艇になればなるほど、組織だの団体だの周りとは無縁になりがちだが、頼りになる組織・コーチの下で才能はより開花する。

必要なのは、選手の勧誘、コーチングの評価とサポート、得られた結果のアピールと正当な評価を受けることであり、現状は個人の努力に頼るところが大きいが、もう少し系統立てて支えたい。

一方、前述した生涯スポーツへの取り組みは、各スポーツでは重要な価値と位置を占めるが、ボート界では遅れている。経験者は各スポーツと比較しても劣らぬほどいるのに、余暇の楽しみでボートを漕ぐ人は極めて少ない。ボートの特性として、安定した水域、艇(やはり個人所有するには高価)など必要で敷居が高いと言えるが、設備が揃った滋賀ですら多くの経験者がボートから離れている現状を考えると、生涯スポーツに先駆者として取り組んできた我々のやらなければならないことは多く残されていると思う。

2) ボート以外のスポーツ関係者(特に水上スポーツ関係者)

過去の漕艇通信をひも解いて、ボート以外のスポーツ記事は年始の駅伝大会ぐらいである。近年、文部科学省の推進する総合型地域スポーツクラブへの取り組みあたりから、ボート以外のスポーツ(特にカヌーをはじめとする水上スポーツ)に目が向き始めた。きっかけは多分に行政の思惑に乗せられた感じだったが、今年6月に瀬田RC内のカヌー体験教室に参加して、カヌーの難しさと面白さを実感し、私はあまりにボートのみにかたくなであったと反省している。

同じ水域で練習するボートとカヌー。知らぬ仲なら互いに練習の邪魔だと煙たいだけであったが、体験教室以降、よくもバランスをとって漕いでるなー、すごいなーと感心することしきり。もし、瀬田RCでカヌーの練習が出来るなら、瀬田RCはもっと楽しい場所になるだろうと確信を持って言える。

ヨット、ドラゴンボート、水上バイク、ボートセイリング。実は単に食わず嫌いだけじゃないのか?様々な水上スポーツに参加できる場所を提供できるのが我々の倶楽部であったならうれしいよな(可能であれば陸上のスポーツもね)。

互いに同じ水域、近くで練習していても全く評価の対象外(眼中にない)であった人達に認知されること、まずはそこから始めてはどうだろう。そして、一緒に活動出来ないだろうか。同質の単一化された団体は、それはそれで居心地の良いものだが、異質の組み合わせには予期せぬ(良くも悪くも)ことが起こる。変わることを喜びと感じられるか。倶楽部会員に問いたい。

3) 一般社会の人々(特に地域社会の人々)

社会貢献担当という役職柄、瀬田RCの業務でボートとは直接関係ない方々と話をする機会も多いのだが、「おたくの倶楽部、この間新聞に載ってましたね。」と、スクラップ記事を見せられたりすることがある(僕は大阪在住で、大阪の新聞に瀬田RCの記事が載ったことはないんですよ、とは言えない・・)。

過去から、試合の結果はスポーツ欄や滋賀版(湖南版?)に記載されていたが、地域の人たちがスクラップ保存して頂けるのは『ボート体験教室』である。つまり、結果報告より参加型の出来事に人々はより心を動かされるということだと思う。地域社会に認知されたい、と倶楽部内部の閉じられた取り組みをアピールするより、うちはこんなにみなさんに開かれた倶楽部なんですよ、と一緒に取り組めるイベントを広報すること。これが結局自らを高め、高く評価してもらえる方法だと思う。

スポーツクラブのNPO法人である我々が、社会に貢献する方法は『スポーツを通じて社会全体の利益の増進に寄与すること』『地域スポーツ文化の創造』であるが、具体的な取り組みは以下に挙げることだろうと思う。

日頃、我々は社会にあって仕事を持ち営利活動(報酬を得る)している訳だが、どんな営利法人と比較しても瀬田漕艇倶楽部の組織としての取り組みは異質である。単にスポーツとしてのボート(技術・考え・ノウハウ)を社会に売り込むだけでなく、スポーツを組織の共通利害として持つ団体が、どのように組織を運営し、どんな考えで会員をまとめ、どんな文化を創っていくのか。この過程は、金で人々を縛る組織から成る一般社会から見て非常に興味深いものだと思う。

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