琵琶湖熟年スカリング考

古川宗寿

今春の琵琶湖の水辺は例年になく優しく感じませんか。水草が生き生きして小魚が はねています。そうなんです。琵琶湖の水位調節の方針が変わったらしく、水面が 標準近辺に保たれていて今朝は+7cmでした。2年ほどまえにお役所から「100年に一度の 洪水に備えて護岸堤を作り、水位はいつも低めにしているんです」との説明を受けたことがありました。「そんなの、110年に一度の洪水が明日にもきたら何にもならんでしょう。ボートが漕げんから水位下げないでください」といつもの屁理屈でまくしたてたところ、 担当が会社まで資料を持って説明に来てくれたことがあります。 私の意見が通ったとは 思えませんが、良く似た意見を持つ人達が琵琶湖の周りにたくさん住んでいて今回の方針変更になったとも聞いています。  結構なことです。

今年から朝日レガッタの60歳以上のシングル・スカルにエントリーできるようになり、1月のマシンローイング大会以来目標をなくしてあまり気の利いた練習はせずに自信の持てないまま申し込みました。自艇もFRP製を他人に譲って、木製の古い艇をリフォームして今年からこれを使うことにしました。木のボートは温かくて気に入っています。それとスピード・コーチなる最新兵器を搭載しましたがこれは全く役立たずと言うのが私の評価です。あんなのに一々惑わされることもないし、感が鈍くなるように思えてなりません。 そんななか、なんとか頑張って10回くらいは琵琶湖に出ました。

大会では自分でも可笑しいくらい「ふにゃー」としか漕げませんでした。でも優勝です。 ライバル達もみんな若き頃は大会の優勝者や日本代表選手だった人達でしたが、みんなよく似たもんでふにゃふにゃでしたね(笑)。 若い選手達から、下手やなあ・・。昔はあんなもんか。 なんて声が聞こえそうです。

歳を取るごとにみんなスカリングが下手くそになるようです。やっぱりローイングはパワーがあってこそ技術がなり立つことを証明しているような気がします。ボートには匠の技は存在しえないことが悔しいです。 あとひとつ、持論まがいに運動能力に於ては種(人間と他の動物)の差を絶対越えることはできない、性(男と女)の差も越えられない、個(個人差)を訓練で越えることもかなり難しいが、あります。

個の差には身体機能、体位体格、年齢がありますが、ほとんどの競技では勝負の公平性を保って試合を面白くするためにこれら、個の差で競技種目を分けていることはご承知の通りです。では、年齢差によるカテゴリー分けでは今回のように50歳〜と60歳〜の10歳刻みが妥当かを考えて見るとやっぱり不公平ですよ。実感では4〜5歳きざみが良いところでしょうな。 つまり、60歳の私がどんなにふにゃふにゃ漕いでも勝つのは自然のなり行きなのです。たぶん69歳の人は出たくないでしょうね。

種の保存のために老いた個体は早々に消え去り、次代に限りある食料を譲るべきである。これは永代に渡って神様が決めてきたルールです。なのに美味しいものを日々たらふく食べぶくぶく太り、ボートレースでは60歳以上を作ってもらい優勝して威張っている。この身の情けなさを一週間のうち1秒間くらい?は反省しているところです。

当然のこと、7月の城崎温泉の社会人大会60歳以上優勝をめざしてもう、練習再開しました。瀬田漕艇クラブの年寄りの仲間の皆さん!若者達だけをのさばらさないで、下手くそスカリングに気後れすることなく、どんどん漕ぎましょう。そしてクラブ内では一週間1秒間以外はもっと年寄りの存在を誇示し威張ってみませんか。

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