SAUGATUCK Rowing Club

古川宗寿

師走にあわただしくニューヨーク北にあるConnecticut(コネテイカット)州に行ってきました。入国審査では人相が災いしてか?時間がかかりました。しかし、私のジャケットの胸の刺繍文字『ROWING』を発見したとたん審査官はニッコリして即、OKを発しました。Rowingの威力はすごいことを再認識です。ケネデイ空港から別の国内便空港にバスで移動して、そこから雪空の中を乗り合い小型バスに乗って40マイル、心細い旅でした。ドイツやイタリア製のブランド艇に押され放しのわが商売を何とか 発展させるために世界の弱き者が集まって共同戦略を練ろうとの呼びかけに応える旅です。その戦略会議の会場がSAUGATUCK Rowing Clubだったのです。

Rowing Clubの運営形態は様々ですがここの SAUGATUCK Rowing ClubはオーナのMr.Hawardが土地と建物で合計7億円を出資して設立しました。彼は会社をいくつも経営するお金持ちとの噂です。クラブはRowing のための施設の他にフイットネス・センターとレストランを備えていてRowing 以外 の人にも開放しています。アメリカ的豪華な施設のクラブでした。丁度、雄琴のオーパルさんに形態が似ているかもしれません。もちろん有料で運営は営利スポーツクラブのカテゴリーになります。コーチとトレーナーが数名、レストランに5名、受付に1人、掃除夫が3人程度の従業員です。米国でも、昔の瀬田漕艇クラブのような掘っ立て小屋程度の規模のクラブもありますが、ここは高級住宅街であるこの町に似合っているクラブなのでしょう。採算は近年になってやっと、とんとんになって来たとのこと。Rowingでは儲からないのはどこも同じでなのです。Mr.HawardはRowingのためにほとんどの時間を使っているとニヤリとしていました。地球上には「Rowingに浸かりきりになるという慢性疾患」を発症するウイルスが存在すると私は思っていますが、この人も完全に感染していると診断しました。

営利クラブといっても人間関係の温かい地域のRowing Clubとして機能していると見ました。コーチ が艇庫内を案内してくれました。冬季は水上には出られないので7隻のコーチ・モータボートは船台に並んでいました。艇庫内は暖房が入っていてリガーを外した艇は天井高くに収納、床はトレーニング場として利用していました。昨シーズンにジュニアで活躍したクラブの選手を盛んに自慢していましたがどこも自分達のクラブからチャンピオンが出ることは誇りなのです。 米国内には約900の Rowing Clubがあります。日本も登録競技団体数では負けていないと思いますが学校単位の零細クラブが多いので量からみれば米国は日本の3〜5倍の規模で質の比較では限りなく大きい差があります。

2月18・19日に東京でボート人口増大フォーラムが開催されます。我が国の Rowing 人口減少を食い止めるために競技スポーツ偏重から生涯スポーツの要素も加えて愛好者を増やそうとする 運動のスタートです。私もパネラーとして参加しますが忌憚のない意見を述べて日本のボート界の価値観の方向転換に加担してみたいと意気込んでいます。瀬田漕艇倶楽部は創設30年近くになりました。今後、どんな形態のクラブを目指すのかを過去の運営手法にこだわらないで柔軟に発想して時代に合うように進化しなくてはなりません。そして次代の我が国でのRowing Clubのあり方を提案して存在価値を示すチャンスが来ていると考えています。

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