ボート安全講習会その1

和歌山RC・古川幸喜

去る12月16日、京都の伏見工業高校にて安全講習会が開催され、出席してまいりました。 今回この講習会において、心肺蘇生法の実技及びAED(自動体外式除細動器)使用の実技講習を受けました。その講義に関する要点をまとめました。

救命救急に関する話

講師:京都市伏見消防局 出店氏
京都市伏見区の人口25万人を5つの消防局でカバー。伏見消防局の1つの救急チームにおける救急車出動回数3,000人/年。うち心肺停止状態の患者は20人/年。救急車要請を受けてから現場到着まで約5分、しかしながら蘇生率はゼロ。心臓が停止してしまうと、脳に酸素が送り込まれなくなり、致命傷に至ります。脳が酸素無しで生きていられる時間はわずか3~4分しかありません。そこで応急手当が重要になります。

救急車要請と同時に応急手当を行うことで命を救うことは可能です。 心臓停止から5分後の蘇生率は、日本では4%、欧米では30%。 この差は、日本国内のAED(自動体外式除細動器)の設置率の低さ、及び救命に対する知識の乏しさなどが挙げられます。欧米では必修科目的事象、且つ公共機関や人の出入りの多い場所、例えばスーパーや駅、プールなどでは、多く設置されてます。

日本国内で設置されるようになった要因は、2002年FIFAワールドカップ開催にあたり、日本の組織委員会が日本国内におけるAEDの設置状況や蘇生率の低さを相当厳しく指摘され、『こんな貧弱な状況では日本での開催は困難』と批判されたことが要員となり、近年各地で設置されるようになり始めたと言われています。

AEDとは?

心疾患(心筋梗塞や不整脈など)による突然死では、心室細動などによる心停止が大きく関与しており、これらの病的な状態を正常に戻すためには、除細動(電気ショック)が最も有効な方法とされています。心室細動の場合、除細動が1分遅れるごとに生存退院率が7~10%ずつ低下するとされているから、いかに迅速に行うかが重要です。

心室細動とは、心臓の筋肉が興奮してブルブルと震えており、心臓が全身に血液を送り出す役割を果たせず、事実上心臓が止まっている状態です。除細動とは、心肺停止の傷病者のうち、心臓のリズムが心室細動の状態である場合に行う電気ショックをいい、心臓に強い電流を流し、心臓のリズムを正常な状態に戻す処置です。

AEDは一般の人でも簡単に安心して除細動(電気ショック)が出来るように設計された機器で、電源を入れて、二つの電極パットを図の通りに患者に張ると、後は音声ガイドの指示を受け、必要に応じてボタンを押すだけの簡単な操作で除細動をおこす医療機器です。

AEDによる除細動と法的整理

AEDを用いて応急手当を行う場合は、同時に気道確保・人工呼吸・心臓マッサージなどの適切な心肺蘇生法を行う必要があります。(但し人工呼吸に関しては、やはり抵抗がある上、HIVやC型肝炎などが伝染る危険性があるので、省いてもやむを得ない。)

AEDの使用は、医療行為にあたりますが、以下の4つの条件を満たせば医師法違反とはなりません。

  1. 医師などを探す努力をしても見つからないなど、医師などによる速やかな対応を得ることが困難であること。
  2. 使用者が、対象者の意識、呼吸がないことを確認していること。
  3. 使用者が、AEDの使用に必要な講習を受けていること。
  4. 使用されるAEDが、医療器具として薬事法上の承認を受けていること

まとめ

今回の講習によって、我々ボート部に関わる者にとって、ボート競技というものが、水上でのトラブル、トレーニング中のトラブルなど、常に重大事故と隣り合わせにあるということを再認識しました。またその上で、安全に関する意識を高めていくことも重要な課題だと実感しました。それらのひとつとして、応急手当が挙げられるということになります。今回の実技を通じて感じたことは、実技講習であったにもかかわらず、頭の中で手順を理解していても、実際行うと、どうしてもマニュアルどおりに動いてしまおうとして時間がかかってしまいました。手早く迅速に対応する為に、反復して練習する必要性を感じました。実際、最初に蘇生法で気道確保や呼吸確認、人工呼吸、心臓マッサージをしたときは、講師の看護士さんに何度も確認しながらの作業でしたが、次のAEDを使った実技では、気道確保や呼吸確認、人工呼吸、心臓マッサージに至る手順が随分スムーズに出来たという事実がありました。もし心肺停止に陥った傷病者を救助する必要がある状況に遭遇した場合、以下のことに留意し、行動を起こして最悪の事態を免れるよう努めましょう。
  1. 勇気をもって行動すること(うろたえている暇はありません)
  2. 1分・1秒を争う状況であることを認識して迅速な行動をとること
  3. 気道確保と心臓マッサージ
  4. 救急車が到着するまで、諦めずに救命措置をとること
Love Rowing, Love Seta——— Love Rowing, Love Seta——— Love Rowing, Love Seta——— Love Rowing, Love Seta

この文書の情報