英国ボート事情 〜その1〜

植田健三

みなさん、こんにちは。アダルトチームの植田です。私は、昨年末まで4年間英国に滞在していました。この間、現地のローイングクラブに所属してボートを漕いでいました。今回、「英国ボート事情」というテーマでいくつかのトピックをご紹介したいと思います。

英国ではボートは非常に身近で、そして伝統的なスポーツです。1775年にテムズ川で行われたレースがその起源とされています。何と230年も前のことです。数あるレースの中でもその最高峰と言われるのが毎年7月に行われるヘンリー・ロイヤル・レガッタです。その名からもわかるように英国王室がパートナーであり、観戦にも来られるという何ともアカデミックなイベントなのです。

記念すべき第一回大会は1839年に開かれ、第一次、第二次世界大戦中を除き毎年開催されて来ました。ボートを漕ぐ人々にとってこの大会で勝利することは最高の栄誉であり毎年、世界各国から200を超えるクルーがエントリーします。日本からは三菱ボートクラブがよく出ます。レースはGrand Challenge Cup(8+)、Stewards Challenge Cup(4-)、Queen Mother Challenge Cup(4X)と言った、複数のカテゴリにーに分かれておりすべて2杯レースです。物足りないような気もしますが見る者にとってはこちらのほうが一騎打ちで迫力があります。当然、1日に行われるレースは限られるため、期間は5日間に渡ります。予選を消化するために朝は8時から夕方7時までレースは続きます。距離はすべての種目、1マイル550ヤード(2112m)。これもまた伝統。

英国らしく観戦するにも伝統的スタイルがあります。Stewards Enclosure(大相撲でいう桟敷席みたいな特別席)ではドレスコードが適用されます。男性はジャケットにタイ、女性はドレスまたはスーツ着用。おまけにスカートの裾は膝下にという厳しいルールが今だに守られています。携帯電話使用は当然禁止。紳士淑女の皆さんはシャンペンを飲みながら優雅にレースを観戦します。レースの模様は放送で逐次紹介されます。ゴール近くに来ると観客席からは大きな拍手でクルーの力漕を称えます。決勝はどのレースもさすがに肉薄しているので最後まで目を離せません。一方で午前と午後にはちゃっかりティータイムブレイクを入れているところなどいかにも英国らしいところです。

うわさには聞いていましたが、実際に観戦して感じたのはボートレースの楽しみ方の多様さです。レースを応援する人、食事を楽しむ人、バンド演奏を楽しむ人、それぞれのスタイルが160年もの間ずーっと続いて来たのかと思うと改めてヘンリーレガッタの重みが伝わってきました。ここに集う人々の挨拶は”Enjoy Rowing”です。

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