ローイングin Australia

賛助会員 小林 啓晃

みなさん、こんにちは。瀬田ローの賛助会員ですが、同時に、オーストラリア・シドニーのローイングクラブでボートライフを楽しんでいる者です。シドニー港は内陸へ大きく切れ込む水深の深い入り江を持つ天然の良港で、中心部を更に西方向へ進むと数10キロも続く細長い入り江となります。こうした入り江は勿論海水ではありますが、景観としては川と呼ぶべきものです。こうした「川」の沿岸にセーリングクラブやローイングクラブが点在しています。

2005年シドニーに赴任してからすぐにNorth Shore Rowing Clubという129年の歴史を有するクラブに入会しました。入会金250ドル、年会費490ドル(当時)というのは豪州では標準的なところでしょうか。このクラブは、比較的年齢の高い人々がボートを趣味として楽しむという色彩の強いクラブで、この点とアットホームな雰囲気が選択の際の大きな理由となりました。52歳の小生はむしろ若いくらいです。そうは言っても、会員の中には東京オリンピックのメダリストがいたりして、レベルは高いので、小生などは未だに「フォワードをゆっくり、リズムを大切に」などと初歩的なコーチングを頂いているところです。特に、シンスカは全くの初心者の域を出ません。

豪州人は「人なつっこい」と同時に「他人には干渉しない」人たちなので、練習時間など決まったものはなく、それぞれが自分の都合のいい時間を設定して練習しています。私は週に2回エイトの練習に参加させてもらい、日曜日には日本人学校の生徒さん達とボートを楽しんでいます。時にはシンスカに乗っています。シドニー湾から昇る朝日を見ながら、両岸に広がる目に沁みるような緑の中、静寂の中を一人進むボートは時に神秘的でもあります。

クラブの活動として面白いのは、企業やコミュニティ、学校に対するコーチングやレースを企画してボート活動の普及に努めていると同時に、これらをクラブ財政の糧としている点です。先日もCorporateレガッタと称するレースを主催し、クラブ周辺には「水上運動会」を楽しむ人々が大勢集いました。

中学校・高校との協定に基づくコーチングも盛んに行われているようです。

日本人学校の生徒さんクルー

去る11月24日には、我がクラブの主催するレースがシドニー・オリンピックの会場で開かれ、日本人学校の生徒の皆さんと参加してきました。彼らがボートを始めたのは今年の初めで、毎週日曜日1時間半程度の練習を重ねてきました。最初は「どうせ負けてしまうだろう」と出場に消極的だった生徒さんもいたようですが、レースに出たことで、クルーの皆と力を合わせてボートを進める感動や風を切って進む感覚の面白さを体感してくれたようです。今では、「出てよかった!」「もっと練習したい」と言ってくれています。

シドニー大学のボートハウス。2 階はシドニーでも名の知れたレストランになっている。

他のボートクラブでは、艇庫の建物自体が地域の社交場となっており、立派なレストランや遊技場が併設され、各種パーティに使用されています。

いずれにしろ、こうしたクラブライフという一つの文化が社会に根付いている点は、日本人にも大いに参考になります。我々のように縁あってボートという競技を経験した者は、日本におけるボートクラブ文化普及に貢献しなければならない、という気がしています。もっとも、こうしたボートマンにとって天国のような環境も、好条件に恵まれた豪州で、しかも100年以上の時間が経っていることを考えると前途は多難ではありますが。

出張でシドニー以外の都市へ出かける機会も多いので、パース・ブリスベーン・メルボルン・キャンベラといった諸都市のローイングクラブへも顔を出しては時にvisitorとして漕がせてもらっています。日本のボートも限られたアスリートの世界から幅の広い楽しみのボートへと動きつつあります。「一つのスポーツ文化」となるにはまだまだ長い時間と努力が必要ですが、在豪のメリットを活かして日本におけるボートの普及と地位向上に少しでも貢献したいと考えています。

私のオーストラリアでのボート活動については、ブログに詳しく載せています。ご興味ある方がいらっしゃれば覗いてみてください。コメントくだされば幸いです。

シドニーローイング日誌

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