The Coach's Corner Vol.5

World Rowing Forum

坂本剛健 (goken@rowing.jp)

どうも,The Coachです.10月21日から11月15日までヨーロッパへ行ってきました!ヨーロッパは初めてなのであちこち行ってやろうと計画を立てました.まずこの夏に親しくなったデンマークの友人を訪ねてコペンハーゲンへ.デンマークRowingの強さの秘密を調査してきました.1週間の滞在の後,イスタンブール(トルコ)へ.ここでは1週間を観光&WRF(World Rowing Forum)に費やし,最後はイギリスで10日ほどぶらぶらしつつ帰り際にHenley on ThamesにてRiver&Rowing Museumとイギリス最強のボートクラブLeander Clubをみてきました.今回はその中のWRFについて報告します.

今回のメインテーマは「Competing for the future: Attracting new generations to rowing」でした.日本でも問題になっていますが,世界的にもロウイング人口は減ってきているようで,そのためにどうするか?ということです.取り組みの一つとして,FISAではパラリンピックへの参加を働きかけていましたが,北京オリンピックでの採用が決まりました.カテゴリー分けや道具の問題など課題はたくさんあるものの,今後FISAはAdaptive Rowingを重点的にサポートしていくとの姿勢を打ち出しました.日本国内ではAdaptive Rowingへの取り組みは僕の知る限りほとんどありませんが,瀬田ローは将来この領域へ踏み出していくことのできる数少ないクラブではないでしょうか.

またジュニア選手をハードに鍛えすぎ,その結果ロウイングを早く辞めてしまうと言うのは日本だけではなく海外でも同じようで,選手を長期的な視野で育て,ロウイングを長く続けてもらうためにはどうすればよいのかと言う講演もいくつかありました.その中の「Long term development」という講演をしたVolker Nolte氏が質疑応答で「世界ジュニア選手権を開催するのは間違っている!」とコメントした時は「うわ〜言うてしもた!」と言う感じで一瞬会場がシーンとなりました.しかしこのことは僕も感じていたことで,最近,少なくとも日本のボート界にとって世界ジュニア選手権はあまりプラスの作用をしていないのではないかと考えるようになりました.ジュニアの時期に世界レベルでオープンクラスの選手を相手に試合をし,(大抵の場合)大敗してくることがその選手の将来のためになるのでしょうか?更に世界ジュニア選手権に限らずインターハイや国体なども同様ですが,もっとエンジョイしてやるべき時期に目先の勝利のみを目指してハードにやりすぎているケースが散見されます.選手をこれらの試合に送り込んできた僕ももちろん同じで,どこまでやるべきかと疑問に思いながらも(それなりに)ハードトレーニングを課しています.「最大限の努力」ではなく,「勝つために必要な最低限の努力」となるように意識はしていますが・・・.

今回印象深かった講演として,「Changing times for Endurance Sports」という題でオーストラリアのスポーツコンサルタントが行ったものがあります.その中の問いかけでこんなものがありました.「もしあなたが15歳の,タフで,才能があり,やる気もある,強い競技者だったとしたら・・・なぜサッカーじゃなくロウイングを選ぶ?(サッカーを選ぶだろう)」確かになぁ.結局いまのままでは絶対にダメで,何かを「変える」と言うことが必要であるという話でした.今回たまたまInternational Biathlon Unionの幹事であるKokkonen氏と話す機会がありました(彼は講師として招待されていました).日本ではあまり見かけることの無いバイアスロンは,ロウイング同様もともとはそれほど人気のあるスポーツではなかったのですが,いまではヨーロッパで大人気のスポーツで,試合はテレビで頻繁にカバーされるそうです.何をしたのかと言うと,伝統的な種目を残しつつも,見て楽しい種目を新たに作ったと.ロウイングも近い将来オリンピックでの直線2000mレースを諦め,見て面白い距離&種目に変えざるを得ないのかもしれません.

“Forget the past – or we have no future”

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