世界選手権観戦雑感

山本白

長良川で行われた世界選手権の特集(?)は先月号で終わったはずで、皆様のなかでも、すでに過去のことになってしまった感がある長良川の世界選手権について、書き残しておこうと思う。(本当は、先月号に投稿する予定だったのが遅れてしまいました。ごめんなさい〜)

世界選手権が長良川であるということで、見てみたいなぁとは思っていた。もちろん、私はいままで世界選手権を自分の目で見たことがない。レースの予選は平日から始まるのでレースを全部見るのはさすがに無理かなぁと諦めていた。が、やはり、天の導きなのかどうかは知らないが、私が現在所属する組織は夏休みを7月から9月の間に好きな時に取ることが出来る。ビバお役所!

というわけで、8月28日(日)から9月4日(日)まで長良川に行くことにした。ベースキャンプはもちろん、滋賀の実家とし、実家の車で長良川まで毎日移動する計画を立てていた。で、往復に疲れたら適当な空き地でテントを張って寝たらいいやとすごく気楽に考えていた。

8月23日ごろ

台風が来ている。それも結構でかい。進路予想方向も伊勢湾を向いている。大丈夫かいな?某社の社長が社内報で「台風だけは避けたい」と言っていたが、ぴったんこ来ている。

8月24日ごろ

大会日程が変更になって、日曜日の予選は火曜日に延期。その他のスケジュールも変更とのこと。で、この辺の情報がFISAのWEBサイトには載っていたが、長良川大会のWEBサイトには、全然載っていなかった。一番早かったのが、坂本君からのメール。その他、T自動車の友人からの情報。どうなっているんやろ?大丈夫か、大会運営??(結局、大会WEBサイトには駐車場とかの重要な情報が載らずじまいだった。)

とはいえ、大会現場は、準備したすべてのブイなどの水上基材とかテントなどをすべて撤去したとのこと。ボランティア各位は大変だろうなぁ、お疲れ様と思わずにはいられなかった。

8月25日ごろ

台風のコースが東よりになったので、再度日程を変更して、月曜日から予選を行うとのこと。このFISAの判断の早さには正直驚いた。ある意味、自分たちの決定を覆して、再度変更したからだ。ただし、状況は常に動いており、すばらしい判断だと思った。このあたりの、適切かつ迅速な判断は日本人には不得意なのかもしれない。特に私が所属している、いまの組織とかその組織に関係する人々を見ると、強くそう思う。

どんな言葉が一番適切なのか。「強いリーダーシップの不在」とでも言おうか。事なかれ主義、前例踏襲、『委員会が決めたから』というような責任の不在・あいまいさ、ある事を決定することからの逃避。天候や不可抗力への責任転嫁。言い逃れ。 まぁ、書いていてイヤになってきたので、このへんで終わりましょう。

8月27日(土)

東京から滋賀へ新幹線で移動。家族は行かない、というか行くことができない。上の娘は9月1日から幼稚園だし。というのも大きな理由であるが、子供達を連れて行ってもすぐに「つまんな〜い(関東弁)」と言われてしまうのは目に見えている。上の娘は戸田に連れて行っても、中央大の艇庫裏近辺のブランコで遊んでいるばかりだ。長良川にブランコがあるはずもなく、遊具もあるはずもなく、連れて行っても子供にとっては退屈このうえない時間になるはずである。

せっかくの夏休み、しかも世界最高のレースを目の前にして、子守りで過ごすのはちょっと勘弁して欲しかった。というわけで、すばらしく理解のある妻のおかげで、ひとりさっさと実家に戻ってきた。

8月28日(日)

すばらしく良い天気。朝から長良川に下見に行くことにした。車で2時間弱で現地に到着した。まずびっくりしたのが、コースサイドの整備状況。長良川に前回来たのが1999年秋の新人選手権。このとき初めて長良川のコースに来たのだが、「何じゃこりゃ」状態。三角テントが集まって本部になっていて、ボートコースではなくただの河川敷としか思えなかった。

それが、どうだ、このコースの美しさは!いままでで一番きれいなコースだ。ブイの間隔、張り具合。。。(もちろん、この後ダメなところもどんどん目に着くのだが)

大会本部建物裏の役員駐車場に車を止める。今日は、レースではないので誰でも止めることが出来るらしい。もちろん、次の日からは入れなかったので(試しました)、所定の場所に置きました。

本部の建物も立派だが、部分的にカネを掛けすぎているようなところもあったり。まぁ仕方ないか。

8月29日(月)

予選が始まった。朝一番から観戦。あらかじめBスタンド券を買っておいたのだが、予約販売をしていたときのBスタンドの位置と実際の位置がかなり違う。どうやら、元々のBスタンドとして設定していた場所を地元の幼稚園児や小学生の応援場所として使用するため、Aスタンドに変更したらしい。(ゴールよりのAスタンドと造りが見るからに全然違う。)というわけで、当然の如く大会スタッフにクレームをつけた。小生曰く「ゴールラインからの近さと値段のバランスで、この場所を選んだ。勝手に場所を変更するとは何事か。返金しろ」と。こちらの話の筋はすごく通っているので、難なく返金してもらい、\6000を足してAスタンドのチケットを買った。

やっと、レースの感想に入る。小艇が速い。すごく速い。ペア艇のあんな動きは今まで見たことがない。もちろん、エイトとかフォアも速いんだけど、異次元の艇の動きを見せつけられました。今まで世界選手権とかオリンピックのビデオは見ていたけど、やっぱりビデオじゃ伝わらないものがたくさんある。

いままで、世界選手権に参戦、もしくは観戦した諸先輩方はこの衝撃を伝えようとしていたのか。

アスリートエリア

アスリートエリア内について、感想を少し。 エリア内は広いし、ボートラック、オールラックとも十分な広さがあると感じた。ただ、選手控えテントの周辺がお粗末。雨が降った後は、土がぬかるんでどろどろ。もうちょっと配慮があっても良いのではないか。

審判、役員

日本のレースだとコースのあちこちで見かける審判、役員をほとんど見ることがなかった。

大会本部近くとかでこれ見よがしに、(まるで、俺は審判なんだぞーと周囲に見せつけるように)偉そうにしゃべっている役員もいない。建物内をこっそり覗くと、黙々と仕事をしているおじさん方がたくさん。ちゃんと裏方に徹して仕事しているんやなぁと感心しきり。(まぁ、こんなことで感心すること自体がおかしいんですが)

レース間隔

最短6分間隔でレースを行っていく。で、海からの風が強くなる午後にはレースがないようにしていた。レース間隔が短く間が空かないので、ずっとレースを観ていることが出来る。逆に、レース間隔が短いのではないかとおもったくらい。やったらできるんやん。

なんで、日本ではできひんのか? 悪天候が予想された時(確か土曜日)はレース開始時間を早めて、終了時間を早くし、できるだけ悪コンディションでレースを行わないようにするスケジュール変更があった。この開始時間変更を知ることが出来ず、レースが観ることが出来なかった人もいるだろうし、関係部署への変更周知徹底も大変だっただろう。しかし、これもすべて大会運営が、「選手自身が納得できる条件でレースを行うことが出来るようにする」ために行われているためだと思う。役員の都合や休憩、昼食、観客の都合なんて(言葉は過ぎるが)関係なく、選手のための大会運営なんだな、と初めて感じたボートレースでした。

欧米人選手

感想。デカい。強い。

元気!:

レースが終わってからも荷物を持ってサンダルとかで走ってバス乗り場まで行く。

しゃべりまくっているし。疲れてへんの?っちゅーくらい

食べ物:

選手が御飯を食べる様子を観察してみました。

バランスの良い食事というよりも、好きなものをどっさり、てな感じ。もちろん、食堂の食べ物の選択肢がどうやら少ないようで、そのせいもあるかもしれないけれど、それにしても、レースを終わった選手がフルーツだけって何それ?炭水化物とらんでええの?

スタート台

発艇施設も見学できる機会がありました。ほとんどの材質は、FFUというウレタンとガラス繊維でできている合成材です。(弊社の製品です。すんません、PRで)

立派な施設でした。ここで、選手がスタート練習するところも観ることが出来ました。

スタートを見た感想:速すぎ。なんじゃ、そりゃ。

レスキュー

救助艇として、ジェットバイクが使われていました。スピードが出て、小回りが利いて、と利点はいろいろあるが、一番の利点は、プロペラがないので、救助時に身体やボートを傷つける恐れがないというじゃないかなぁと感じました。

これからの救助艇は、ジェット噴射式の船外機が当たり前になるのか?

日本人選手

欧米人選手の強さ・でかさを目の当たりにして、改めて、体格では劣っている日本人選手のこれまで残した成績を思い出して、武田選手をはじめとする彼らのすごさ・偉大さを感じました。今回も、魂の入ったレースをたくさん見せていただきました。お疲れ様でした。

土曜日、日曜日はこんなよーさんボート観る人おったんや。というくらい、たくさんの観客。完全に漕艇外ならぬ想定外の人の多さやったんやろなぁ。駐車場から出る時とかパンクしていたもんな。

アンケート

食堂には、選手向けの大会開催に関するアンケート用紙が、いろんな言語で書かれて置かれていました。アンケート内容は、レース運営(地上、水上)、食事、サービス、ホテルとの移動、などを1から5点で評価するもの。今の日本のレースで選手にアンケートを取って、真の意味でフィードバックしているレースってあるのかな?レースって誰のためのもの??

アダプティブ

アダプティブ・ロウイングを受け入れる度量が今の瀬田漕艇倶楽部にあるのか?考えてしまった。

レース会場では、いろいろお世話になったK造船の社員の方々をはじめ、コース横で真っ昼間からの宴会に誘っていただいた、K林さん、K原くん(Kばっかりや!)、その他のみなさん、ありがとうございました。お陰様で楽しい、有意義なレース観戦ができました。

最後に、日本ボート協会に意地悪な質問を載せて終わりにします。回答が返ってくることは全く期待していませんが。(笑)

質問:日本ボート協会殿

私は大会開催にあたって、金額は非常に少ないですが寄付をしました。そのお金の使い道を教えてもらえませんか?寄付をした見返りなんて要りません。欲しくもありません。ただ、何にそのお金を使ったのか、教えて下さい。

「そもそも寄付というものは、寄付をした時点で、お金の使い道を気にしないものだ」、という意見は受け付けません。私には、寄付を要望されたときにボート協会殿の志が見えなかったのですから。

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