汗くさい艇庫からチャンピオンは生まれない

この前の朝日レガッタでは、私は銅メダルを獲得した気分です。つまり、予選3位での通過は私にとっては目標の達成です。若い選手が決勝にでて3位になったのと同様の価値なのです。満足です。でも、もっと良い艇と充分な練習時間があったら次は準決勝には行けるぞと思うのはいまだに自分が分かってないことなのかもしれません。次はエンパを買って上位進出を狙おうかな。ガハハハハ……。

私はいつも、かなり頭にきながらクラブハウスの4S(整理・整頓・清掃・清潔)にいそしんでいます。工具の管理もまだ充分ではありません。これらは断じて私の趣味ではありません。あらゆる組織運営において、ベースができているかどうかの指標となるからです。このことの大切さに気付くメンバーを1人でも増やすことがクラブにとって最優先と考えています。

我国の近代スポーツの多くは明治時代の幕開けと同時にクラブスポーツとしてではなく学生スポーツとして普及が始まった。きっと一般の人々にはスポーツをやるなんて余裕はまだ無かったのだろう。また、古来の武道スポーツの伝統が我国のスポーツすべてに対して楽しみより、道を求めるという求導精神がスポーツを行う際への雰囲気と価値感を作ってきた。この二つのことが欧米のスポーツの歴史と大きく異なる点だろう。これがプラスに作用してかつての「東洋の魔女」のように成功した時代も過去にはあった。

何でも許されるという学生の特権意識とバンカラの気風が変化に鈍感な化石人間を作りつづけた。さらにスポーツをやることが全能の社会人を育てるような錯覚を関係者は持ち続け過ぎた。今となっては日本のスポーツ界が時代の変化に追随できない弱点の原因のひとつになりつつあるように私には思える。スポーツの現場は特殊な価値を持った人が集まる、特別の場所であってはならない。このことに関係者まだ完全に気付いていない。長い間、狭量の精神主義とアマチュアの美名に支えられてやってきた結果、スポーツの現場は物心とも極めてプアーな状態になったと思う。設備、道具、コーチング、組織運営、活動理念のすべてに於いて、一般社会の諸活動に比べると著しく低いレベルにあると言わざるを得ない。スポーツとは、艇庫とは汗くさくてこんなもんであると考えて何の改革意識もないリーダーは即、ヤメロ!!と言いたい。

こんな抽象的な苦言では何が言いたいのか読者には伝わらないだろう。要するにスポーツの現場でもやるべきことを世の中並にキチンとやろうということだ。まして4Sなんかは特別のコスト(お金)はかからないのだから構成員の心構えがズバリ反映されていると思う。4Sができないクラブ(又は個人)は当然トレーニングもいい加減で甘いのに決まっている。結果、大した成績が挙がらないのは自然の成り行きである。私が国内、海外での多くのクラブを見ての実経験則だ。クラブハウスの状態と成績には完全な相関がある。

私は昨秋から某K大学のコーチに就任したが先ず宣言したのは合宿所が汚い、きれいにしよう。ダンプカーを2台準備しろ、その辺の物を全部捨ててやる。それに対して「恐怖を感じる」と言ったのがいたが、汚い合宿の万寝床がそんなにいいのか。その気持をわからんでもないが、そいつも一緒に捨ててやろうかと思っている。汗くさくて、汚いクラブハウスでスポーツをエンジョイできるだろうか?創造的になれるだろうか?物事を順序よく整然と進めて結果を将来に反映させることができるのだろうか。そんなことに気を配れるクラブや選手ならきっと自分達のRowingにも繊細で創造的に向かえているはずである。Safety Rowingも自然に身に付くことになろう。たぶんまだ全部の読者には何を言いたのかが分からないと思うのでもっと、具体的に述べる。これらは既に世の中では常識であることを念のため付け加えておく。

ルールを守れ

狭いクラブハウスに多勢のメンバーがきて自分勝手なことをやり放しでは一日にしてスクラム状態となろう。全員がクラブをうまく運営するために大人の約束事を守ろうと思うことだ。クラブは会費を払えば一方的にサービスが受けられる営利スポーツクラブではない。主たる運営の構成員だという自覚が大切となる。だれもが自分の漕ぐ時間は大切だから限られたメンバーが必死で維持管理しないとやっていけないのでは初歩的段階過ぎる。

艇庫は艇庫なのだ

艇庫は艇を保管するところである。ものを目的以外に混然と使うべきではない。

重ねて言う。これらの事は既にスポーツ以外のところでは実行されていて成功の基本としての常識である。ゴミ溜からダイヤモンドは出てこない。高価そうなトレーニングパンツでも放置してあるものは即廃棄する。これは確信犯的な行為なのだ。私は少々の冷たい眼は気にしないでこれからも実行することを宣言する。4Sの行き届かないクラブからチャンピオンが生まれる理由がないからである。

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