瀬田ヘッド三題

三宅一雄

ヘッド必須アイテム(サイドミラー付きキャップ)

よそのレース開催との重複もあってか参加者が少なかったシングル60歳超クラスに東京から単身参加の馬上さん(淡青会/MBC)が、“サイドミラー付きキャップ”を着用だったのをご記憶だろうか。キャップの鍔から10cmほど伸びた先端の小さなミラーを通して艇前方向を捉え、障害物や先行艇のチェックを行いコース取りを容易にする。日本国内では珍しいこの“サイドミラー付きキャップ”は、欧米のレガッタでは普通に見かけるもので、私も何年か前陸で彼らを見た時なんだか楽しそうでその体格と云い威風と云いスカルも上手そうに見えたものだ。 ところで今年の60歳超レースは競合艇がなく馬上さんの独漕となってしまい後続は中学シングル、時間をおいて女子シングル等が続いた。物足りなさもあったが、紅葉には少し早い瀬田川の風景を颯爽とエンジョイモードで楽しんでもらえたのでは思う。レース後、記念にとそのキャップをもらった。

このキャップに関して馬上さんから届いたメールには、『・・・最初は見にくくて「使い物にならん」という評価になると思います。私も戸田で試験的に2回ほど用いてみた程度で今回がレースでの初使用でした。「意外と使える」というのが私の感触です。頭のちょっとした傾きなどで鏡の中の景色が大きくズレますから、慣れるためにはそれなりの時間を要します。装着して2週間くらい経過しないと違和感はなくならないでしょう。少し経つと鏡の中に的確な後方風景をとらえるコツを会得できるはず。今回、レース中におのずと身についたのですが、バックミラーはそれほど頻繁に見なくてもよいこと、必要なコースポイントで頭の位置を正して、瞬時に後方を確認すること。すなわち直線部など安全が約束されているような場所ではミラーの存在は忘れてもよく、漕ぐ方に専念すればよいのです。慣れない川でレースをする漕手にとっては、バックミラーの効用は決して小さくありません。なんども後ろを振り返ってその都度漕ぎの力が削がれるということが食い止められます。まして橋の存在に気付かずぶつかるといった事故はまず起こりようがありません。ミラー頼りの油断に陥ることは厳に戒めなければなりませんが。瀬田川を熟知したみなさんにとっては、このバックミラー付き帽子はあるいは「無用の長物」かもしれません。しかし川でのレース、練習の安全を確保するためにこの簡便なアイテムはもっと普及してもよいのではないかと思われます。欧米のヘッドレースでは多くの選手がこのミラー付き帽子を着用しています。ことしの米プリンストンでの世界マスターズに参加した三菱ボートクラブのメンバーが「ほとんどのスカラーがミラー付帽子をかぶって練習していた」と報告しています。・・・』とある。

瀬田川を熟知し“脳内ナビ”を保有しているクラブの選手諸君には無用で、僅かな風の抵抗も嫌うかも知れない。瀬田川は水道橋を入れると8つの橋(往復16)がある上カーブも多く漁船、近年観光船も出るし、カーブでは対行艇との接触のキケンもある。“サイド付きキャップ”は瀬田川ではこれから普及しても良く、練習・レースに必須のグッズではないかと思う。元NTTの武良さん(現岐阜経済大)のように体内ナヴィゲータを持つ御仁には不要だが。

コースガイド Guide to Course

瀬田川をホームコースとしない多くのビジタークルーにとっては、地元クルーと違ってスタート〜折返し〜ゴールの地形・カーブ・障害物・流れなど川の状況が不案内でレース前、コースへの不安感は大きいものがある。コースについての事前情報は貴重なものとなる。 2006瀬田ヘッドのサイトには、川のマップと共にいくつかの写真も示され、主な危険個所についても親切な記述があるなど随分良くなった。こういった参加者への親切な配慮はヘッド参加を広げて行く上で大切なことであろう。

ロンドン テームズ川のThe Boat Race*の様子はBBCSportサイトで見ることができ、クリックひとつで5分間の映像で見られるCourse Guideが興味深い。今年はモーターに乗り込んで、ゲストの先輩S.レッドグレイブに川を知り尽くしたM.ピンセントがコースを説明するかたちで、モーターの目線からスタートのPUTNEY橋〜上流ゴールのCHESWICK橋までのS字に蛇行する6マイルのコースが映し出される。一線を退いた余裕の二人の楽しげな会話が流れ、周辺の建造物、橋脚、水の流れや2艇接近の難所などなどマニアックな説明がある。

瀬田ヘッドもスタートからゴールまでをモータからビデオカメラで撮影、橋脚や工事ブイ・水位計などの障害物、カーブ等についての解説ナレーションつきの動画としてネット上に情報提供してはどうだろう。初参加のスカル漕手のみならずビジター参加者皆にとって大いに助けになるのではないだろうか。観点を変えてちょっとした川の観光案内も良い。野村君も興味を示していた。

開催時期

前述ロンドン蝸牛ボートレースは、毎年イースターの日曜日の2つ前の土曜日と決まっていて毎年3月の終わりか4月の初めで、2007年は4月7日(*)。かのヘンレーレガッタは7月初旬(**)、CHARLESは10月4週の週末と云う風に決まっている。彼我の伝統の差は大きい。日本でも数年前に始まった“戸田ロングレース”はシーズンオフの1月最終週に定着しているようだ。近年各種レガッタが目白押しで開催日の“定位置”争い?も水面下激しい。瀬田ヘッドの開催は10月が望ましいことは云うまでもないが11月に近くなると朝昼の気温差による上昇気流の影響もあって風波が強くコンディションは不安定となり、クルーにとっても主催者にとっても楽しくない。 レース開催時期の設定は、他団体レースとの競合兼ね合いやクルーズなど瀬田川の商業的利用とのシェアもあるが、一種の“市民権の獲得”であって、琵琶湖でも各種大会が増えている当節、早く瀬田ヘッド開催時期の定位置・市民権を確保して欲しいものと思う。

*英国ではケンブリッジ・オックスフォード対校ボートレースを云う、150回を数える。ボストンのCHARLESはまだ42回だとか。

**4−8July2007、2−6July2008まで決まっている。

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